大学生の頃は岩絵具を使って花鳥画等を描いていた。卒業後数年間は全く描かず、ある時無性に何か描きたくなりその辺にあるペンで抽象的なものを初めて描いた。それを父親に見せたところ面白いと褒めてもらいとても嬉しかったのを覚えている。
父親は今から思えば現代美術のコレクターのような人で、アントニ・タピエス等の版画作品が玄関や階段の踊り場にかけてあった。至ってこじんまりとした一軒家の空間にギュウギュウとそういう作品が飾ってあったのは何ともアンバランスな光景だったと思う。インテリアというには程遠い、ただただ好きで飾られていた作品たちは狭くて日当たりの良い空間で幸せそうだった。
最近は鳥の子和紙を木パネルに水張りし墨や鉛筆、シャーペンなどで描いている。以前画商さんが、「紙は(劣化しやすく)資産価値が低いので油絵なら買いますが紙は…」とおっしゃり、そこまで素材に拘っていなかったので、では油絵の具で描いてみようと挑戦したけれど、匂いとキャンバスの質感がどうにも合わず断念した。和紙の肌理、乾いた質感はどうもかなり好みだったようだ。
資産にはなり得ないかもしれないがただ好きで飾って毎日眺めてくれる人に寄り添えればそれは本望かもしれない。人も作品も一緒に朽ちていく自然、にどこか惹かれる自分がいる。
画像は自宅から車で20分位行った所から眺めた景色。琵琶湖の向こうに比良山系を望む。
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