約1年ぶりの更新。今は来春の個展に向けて制作中で、そのあたりについて少し書いてみようと思う。展示場所は東京のhIDE GALLERYというところで、ということが決まっている。今月に渋谷に移転されるということで、6月上旬に開廊前のギャラリーを下見に訪れた。
まず、自然光が柔らかく広がる空間は美しかった。隣接する渋谷氷川神社参道の樹木を見上げる大きな窓が印象的で白い壁は天井までが約4mと高く、どこか教会のような厳かな感じもした。その日の東京はとても暑かったけれど、中はひんやりと涼しくて自分が半分地面に埋まったような感覚になり、この世とあの世の境界はこんな感じなのかな、、などと妄想しているうちに、不意にその頃読んでいた本の世界のイメージが重なった。
オーストリアの小さな田舎町の野原(墓地でもある)が舞台のお話は、名もなき29名の死者が自らの人生を淡々と語る視点の高い作品で、面白いのかどうなのかと考えつつも、なんとなく描きたいような、でも何を?と、妙に心惹かれつつ読み進めていたところだった。
がらんとしたギャラリーの空間に身を置いた時にふと「こうかな。」と靄が晴れたような感覚になった。本の世界観から受け取ったものが私の場合たまたま線や形になったという感じで描いている。
今回は空間から受け取ったものも大きく、自分ではそこが楽しみでもあり、空間と共鳴した物語から現れる線や形がどんなのか見てみたいと思う。少し小さめの作品をじっくり沢山描いてみたい。言葉に隠れているものを描けたらいいなとも思う。
ギャラリーの窓から見える神社参道の緑。
題名とカバーのイラストもいいなぁと思う。
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